想い

2025.06.09

2040年、未来に向けて、大学病院勤務医へ

 日本は長く続いたデフレと景気低迷のために、結婚しない・できない若者が増え、子供の誕生が減り続けている。2040年頃、出生数は70万人以下、死亡者数は170万人を超える。生産人口が極端に減り、要介護高齢者を中心に高齢者の患者数が極端に増える。病人や介護を必要とする人が増えるのに、人手不足で看護師や介護士が集まらない。経済が低迷するので、社会保険料の負担も限界点を迎え、人件費が高騰しても診療報酬の引き上げができなくなるからだ。それでも高騰する社会保障費を抑制するには、もはや病院の数を減らすしか方法がない。集中と効率化だ。今まで各県に一つはあった大学医学部の数を減らすだろう。特に人口減少が著しい地方の医学部は統廃合し、広域圏で一か所にまとめられるだろう。地方の国立病院・県立病院・市立病院も統廃合され、一か所にまとめる。結果として地方の病院数は減り、勤務医の働く場所は減る。アルバイト先の民間病院も淘汰される。では開業すればいいと思うかもしれないが、昔は自由に開業できた無床診療所の開設は制限される。地域医療構想に基づいて、標榜医数を制限する。さらに地方では患者が少なくなる。仕事を求めて東京で働く成人が、家族も東京に呼び寄せるからだ。結局東京圏内や、地方でも大都市圏内だけに主な病院が集中するだろう。

 患者像も変化する。今までのような中高年を対象にした病院は少なくてよくなる。これからは高齢者を中心に、医療・介護・福祉までを一体的に提供する体制が求められる。なぜなら要介護高齢者に発生する疾患は、短期間に治癒することが困難で、根治が難しいケースが多い。場合によっては苦痛を除去することだけに専念し、根治を断念することもありうる。そんな患者に対して、従来の大学病院や地域中核病院が敷いてきた高度先進医療や救急救命体制がふさわしいとは言えない。むしろ急性期治療が終わった後に続く、回復期・維持期リハビリや慢性期治療の継続が重要となる。さらに病院を早期に退院し、自宅ないしは介護施設に移り、引き続きリハビリや継続的な治療を受けつつ、地域に復帰する。万一急性増悪した時も、救急車で大学病院の救命センターへ搬送するのではなく、高齢者の慢性期医療に特化した慢性期治療病院に運ぶ。そこでは治療しながらリハビリも行い、再び在宅や介護施設に戻る。こうして最期まで家族の近くで過ごし、天寿を全うする。これが未来の病院の姿だ。

 新富士病院グループは、東京都・神奈川県・静岡県にまたがる急性期病院から回復期リハビリ病院・慢性期治療病院・療養型病院・介護医療院、さらに介護施設として老人保健施設・特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・認知症対応型共同施設介護いわゆるグループホームまでを抱える総合医療介護福祉グループである。利用者は同一グループ内病院・施設を利用できる。

 ここで提供している医療・介護は、医学部の講義や大学病院で教わったものではない。高齢者にとって何が最適かを真摯に考え続けてきた慢性期治療のスペシャリストたちの汗と涙の結晶である。臓器別医療に慣れ親しんできた大学病院の医師が忘れていた全人的医療がそこにある。しかも医療・介護だけではなく、時には社会的介入すら必要になる。ここでは医師も看護師も、薬剤師・栄養士・検査技師・理学療法士に総合支援室の事務職たちも一緒になってケアカンファランスを開く。時には外部からケアマネや訪問看護師、さらに行政から地域包括支援センターまで招く。病院が地域と一体になって、住民の幸福を追求する。これが2040年の未来であり、あるべき病院の姿と思われる。

 2040年、あなたが医師として働くとしたら、どの病院を選びますか?

 そのために必要なスキルと経験をどこで学びますか?

 今から一緒に始めませんか?未来に向けて。

京浜病院

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