症例

2025.06.10

rTMS外来新設

リハビリテーション科の佐々木です。脳疾患に対するニューロリハビリテーション、特にrTMSという新治療的技術を専門としています。 

私の専門とする反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、新治療的技術であり脳卒中や脊髄損傷、パーキンソン病、認知症など、様々な疾患に対する有効性が報告されています。

反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS) 
rTMSとは、頭の上に乗せたコイルから照射される特殊な電磁波で、脳神経の活動性を調整する治療的技術です。患者様は車椅子に10~30分ほど座っているだけであり、強い痛みなどもありません。rTMSはMRIと同様に頭蓋骨を容易に通過できる磁気を用いており、目的の脳部位局所のみを刺激することが可能です(図1)。そして脳脊髄神経は、ある部位の脳機能が低下して生じる症状もあれば、脳機能が強くなりすぎて生じる症状もあります。rTMSはそのどちらも調整できるため、様々な脳脊髄症状に適用可能なのです(図2)。 

新しい技術のためうつ病以外に保険適用は認められておりませんが、脳卒中麻痺、失語症などの高次脳機能障害、軽度認知症、パーキンソン症状、脊髄麻痺など、様々な症状に対する有効性が証明されております。 

脳脊髄疾患に伴う運動障害 

体を動かす命令は脳から脊髄を介して各筋肉に到達します。そのため脳脊髄疾患ではその損傷部位によっては麻痺が後遺することがあります。脳は動作を行う場合に、姿勢を安定させる命令や、これから動かそうとする部位の筋緊張を弱める命令も同時に出しています。それらが損傷されるため、脳脊髄疾患に伴う麻痺では“動かない”だけではなく、体が安定しない、筋が勝手に突っ張るという症状が出現します(図3)。これらの治療に必要なのはいかに脱力して少ない力で自在に動かせるかという点が重要になります。 

また動作とは様々な筋への指令の複合体が“学習”された結果、半自動的に起こります。そのため、リハビリテーションにおいても“正しい”動作学習をしないと意味がありません。ニューロリハビリテーションでは、無駄な力が入らないようにするボツリヌス療法などの痙縮治療、正しい動作を矯正するための装具療法などが非常に重要となります(図4)。もちろん前述のrTMSもその動作学習に有効です。 

脳疾患に伴う認知障害 

脳がやられたから喋れなくなっても仕方ない、記憶力が低下しても仕方ないと考えてはいけません。あくまでも脳各部位における機能との関連性を考える必要があります。基本的に脳にとっての社長さんは前頭葉です。しかし社長さんが全ての情報を自分で解析して処理するのは大変ですから、後頭葉で見たものを、側頭葉で聞いたものを処理した上で、頭頂葉でプレゼン資料を作成し、それを社長に見せることにより行うべきアクションが決定します(図5)。脳画像検査や症状の詳細評価によって、原因を科学的に明らかにした上で必要なリハビリテーションやrTMSを適用します。 

行うべきリハビリテーション治療とは 

リハビリというと「がんばる」イメージが強いと思います。もちろんそれはとても大切な姿勢ですが、やみくもにがんばっても意義は低いですし、場合によっては逆効果の場合もあります。あくまでもリハビリテーション治療は医学であり科学です。全ての症状には理由があり、全ての治療には根拠がいります。科学的に、これこそが最善の治療であるといえるようなリハビリテーション治療の提供を常に心がけています。 

青葉さわい病院

活かせる専門性

Profile

医療法人社団 博慈会 青葉さわい病院

リハビリテーション科 佐々木 信幸

職歴:
1997年 東京慈恵会医科大学卒業
2002年 東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学教室助手
2007年 都立墨東病院リハビリテーション科医長
2015年 国際医療福祉大学熱海病院リハビリテーション科 教授
2017年 東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座 准教授
2020年 聖マリアンナ医科大学リハビリテーション医学講座 主任教授

資格等:
日本リハビリテーション医学会認定医・専門医・指導医

専門分野:
ニューロリハビリテーション、ICUの急性期重症者リハビリテーション